初期配座発生法

初期配座発生法では、強制的に回転可能な結合を回転させて可能な初期配座を自動的に発生させ、それらを最適化させます。得られた安定配座を記憶しておき、安定で新しい配座と認識した場合新しい配座として登録します。通常は100から256個の安定配座を記憶領域に取り込み、不安定な配座は消去していきます。ます、可能な初期配座すべてを計算して、最も安定であった配座が、最安定配座と決定されます。

この方法で難しいのは環状分子です。環内結合の一つの二面角を何も工夫無く強制的に回転させますと、環内の別の結合距離においてパラメータがカバーする結合距離を越えてしまうことになってしまい、正常な計算が出来ません。このような問題点を解決したプログラムがCONFLEX(CONFLEX社)、MacroModel (Schrödinger Inc)です。Spartan(Wavefunction)にもCONFEXと同じ考え方の配座解析(conformation distribution)機能が搭載されています。

この手法では、回転可能な結合がN個あり、それぞれをM個に分けて回転(360÷M°で回転)させた場合(M)個の初期配座を発生させる必要があります。
回転させる結合の少ない分子では系統的(Systematic)に配座を発生させても大きな負荷はかかりません。しかし、回転させる結合が7つとした場合でも、計算しなければならない初期配座は2000を超えてしまいます。そこで乱数を利用したモンテカルロ(Monte-Carlo)法を導入し計算する配座数を減らす工夫がなされています。モンテカルロ法は一般的な数学用語ですが、分子モデリングでは配座発生を行い配座解析する方法そのものをモンテカルロ法と呼ぶこともあります。
結合は通常120°ごとに回転させます(M=3)が、さらに細かい回転を行わないと最安定配座を逃すこともあります。解析に関係しない結合は回転させないように設定して発生させる初期配座の数を減らすことも重要です。Spartanシリーズに搭載されているcoformation distributionには、計算手法の制限がありません。極端な話、ab initio法でも配座解析可能です。実際にはab initio法では1配座にかかる時間が大きく膨大な初期配座を検索する配座解析は現実的ではありません。実際には計算時間のかからない(計算コストが低いと表現されます。)方法で配座解析を行い、分指導力学法と同様、得られたエネルギーの低いlocxal minimum構造も含めた最安定配座候補をより精密な方法、たとえばハートリーフォック法で再最安定化させることにより、より真に近い最安定配座を求めることができます。最近はパソコンの性能も向上したため、比較的小さな分子では配座解析を半経験的分子軌道法で行う場合も実用範囲であるといえます。。
網羅的な解析ですので、第二安定配座、第三安定配座を求めたり、ボルツマン分布を解析したりすることも容易です。